yamada-isak's thinking

できるだけ自分自身できちんと考えたことを書きたい。できるだけ、ね。京都から日本を、世界を考えます。

東アジアの海をめぐる、ふたつの「三つどもえ」

私の予想。
中国は近々、具体的なオプション提示で、日本と沖縄の仲を引き裂きにかかるだろう。

昨日は台湾の漁船がフィリピン当局の船から銃撃を受けて漁船員1名が死亡。今日は先月、台湾と日本の間で締結された尖閣諸島周辺水域での漁業協定が発効し、沖縄県と沖縄の漁民が当惑・反発している。
アジアの海を巡って、いずれも中国と台湾をプレイヤーとして含み、日本と沖縄を巻き込む危険なゲームが新しい段階を迎えたかに見える。

 ※本文末尾にソース記事の引用を掲載します。

フィリピンと台湾は両国の間の海の権益を永年、争って来た。両国が主張する排他的経済水域EEZ)が重なっているのだ。そして昨日、死者をだす事態に至った。注目すべきは中国の対応である。中国は全面的に台湾を支援し、フィリピン政府を非難。調査と説明を要求した。
中国にとっては、フィリピンを相手に台湾を支援することによって、台湾に対しては「貸し」を作ることになり、周辺国に対しては「台湾は中国の一部」であることを強力に演出している。偶発的な事態に対する戦略的で功利的に的確な迅速対応に脱帽する。

一方、日本は尖閣諸島の領有権の実効性を示すために、台湾の漁船に限ってその周辺海域での操業を認めるという協定を締結した。尖閣諸島周辺海域で操業する日本側の漁船は主に沖縄県の漁連所属の船と漁民である。彼らはこの協定について「ルールが明確でなく、深刻なトラブルが懸念される」として反対もしくは立場を留保しつつ、「沖縄の頭越しに話を進めないように」と日本政府に再三にわたって申し入れていた。
しかし、沖縄の人々の同意を得ること無く、日本と台湾の協定は、本日、発効することとなった。

さて、ここで問題。
中国はもちろん「尖閣諸島(釣魚島)は中国の領土であり、その海域は中国のEEZであるから、そもそもこの協定は不法かつ無効である」と主張している。ここまでは当然。問題は「次の一手」だ。
中国は、次にどう出て来るか?

人民日報は一昨日「沖縄の帰属について議論する時期を迎えた」とする論文を掲載し、中国外務省も「沖縄の帰属は学会でも意見が確定していない問題」として、その流動性を前提にしていることを明言した。

私の予想。
今回の台湾と日本による沖縄の頭越しでの漁業協定を材料として、中国は沖縄の帰属をめぐる「ゆさぶり」を強めて来るだろう。こう書いている今にも、中国外務省の美人報道官(申し上げ難いが、彼女、タイプです)は、明確な口調で「中国は沖縄の立場を支持する」旨の記者発表を行っているかも知れない。
つまりこれは、明らかに、中国による、日本と沖縄の「引き離し」作戦の格好の材料になる。もしかしたら「中国は、沖縄の漁船に限って(台湾漁船と同等の)中国近海での操業を認める」といったオプションを提示して来るかも知れない。

外交の巧拙が如実に現れる具体的かつ緊迫した場面を迎えつつある。
中国外務省の発表を注視する。日本の外務省は太刀打ちできるのか?

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以下、ソース記事引用。

台湾船に銃撃、1人死亡=フィリピン船が撃つ
【台北時事】台湾外交部(外務省)によると、9日午前10時(日本時間同11時)ごろ、台湾とフィリピンの間の洋上で操業中の漁船「広大興28号」がフィリピンの海上当局の公船から銃撃され、台湾人の船員1人が死亡した。外交部は9日、直ちに公館を通じ、フィリピン当局に厳重抗議するとともに、賠償を要求した。
現場は台湾とフィリピンが主張する排他的経済水域(EEZ)が重複する海域。台湾側は、フィリピンの公船がなぜ銃撃したのか、事件の詳細を引き続き追及していく方針だ。
漁船には計4人が乗船。インドネシア人船員1人を含む他の3人は無事だった。(2013/05/10-01:20)

中国外交部、フィリピン船の台湾漁船乗組員射殺で「蛮行」と強く非難
XINHUA.JP 5月10日(金)11時46分配信
中国外交部の華春瑩報道官は、9日午前に台湾漁船の乗組員がフィリピンの船から銃撃され、乗組員1人が死亡した問題について、「われわれは台湾の漁船乗組員への発砲、射殺という蛮行を強く非難する。中国側はフィリピンに対して即刻調査を行い、早期に説明するよう求めている」と述べた。外交部の発表として人民網が伝えた。

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日台漁業協定が発効=ルール未定でトラブル懸念-マグロ漁
【時事】日本と台湾の漁業協定が10日発効した。沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に設けられた協定適用水域で台湾漁船が操業可能になる。この水域はクロマグロの好漁場。沖縄の漁業関係者は台湾漁船とのトラブルや漁獲減少を懸念し、協定への反発を強めている。
適用水域での漁獲枠や漁船数などを決めるため、7日に台北で開かれた日台漁業委員会は合意に至らず、継続協議となった。この結果、10日からルール未定のまま日台の漁船が尖閣諸島周辺で操業することになる。(2013/05/10-00:45)

「トラブル確実」と懸念 沖縄の漁協、日台協定発効で
 【日経】2013/5/10 2:12
沖縄県・尖閣諸島周辺の漁業権を巡る日本と台湾の取り決め(協定)が漁獲量などの操業ルールを策定しないまま10日に発効することに対し、八重山漁業協同組合の上原亀一組合長は9日、那覇市で記者会見し「確実にトラブルが起きる」と懸念を示した。今後、早期のルール策定を目指し台湾側と交渉を進める。
上原組合長は7日に台北市で開かれたルール策定のための「日台漁業委員会」に出席したが、日台の意見が折り合わず先送りされた。
沖縄県漁業協同組合連合会は9日、傘下の漁協に台湾漁船の違法操業やトラブルを通報するよう求める文書を送付。会見で同連合会の国吉真孝会長は「水産庁に違法操業の取り締まり強化をお願いする」と述べた。〔共同〕